冬の、深夜の海岸線は単車で走るにはやはり寒く、体温は奪われ感覚が薄れてきて、視覚だけが時速50キロで流れる。 星明かりが海面に反射するので、水平線がぼんやりと見える。 闇の中に吸い込まれるような気がするのだけど、そこは完全な闇じゃなくって、星明かりに照らされた闇だ。 光に照らされて闇が闇と確認できるのであれば、つまり、闇なんて存在しない。 やがて数時間もすれば、くだらない、オレンジ色の丸い固まりが昇ってくる。