マクドナルドで本を読みながらコーヒーを飲んでました。目は本の文字を追っているので、もう一口コーヒーを飲もうとする際にはどうしても手探りでカップを探すことになります。
カップに当たった僕の手はそれを掴むことなく、事態を理解する頃には重心の高いカップはもう倒れていて、コーヒーは単なる黒い熱湯であることを、僕のズボンの上から、太ももとふくらはぎにゆっくりと、じわりじわりと印象強く教えるのでした。
僕は「熱い」と言いました。
僕は何度も「熱い」と繰り返しました。
それに気づいた店員は机を拭き、床にモップをかけ、「新しいコーヒーをお持ちします」と僕に告げました。
苦いコーヒーが似合う大人になれたのだろうか。
渋いコーヒーが似合う大人になれたのだろうか。