「旅」という単語はかなり気恥ずかしい響きを持っているので、遠出するときは「旅行」という言葉を使うようにしているんです。使い分けとしては、帰る場所があるのが「旅行」、帰る場所がないのが「旅」という感覚で、つまり「旅」という単語はあまりにロマンチックすぎるということですね。

帰る場所がないのが「旅」であるなら、すなわちそれは本物の根無し草であったり、誰もが憧れる文学的な「死」であり、すいすい飛んでゆく鳥の姿と重なって見えるのが自然であり、となるとその翼が象徴するものはあの世とこの世の出入り口であり、ああ、パトラッシュ、僕もう疲れたよ、ということなのでしょう。